『
神の左手悪魔の右手』が
映画化しています。あの「
黒い絵本」の回が中心になっているということで、かなり期待はできそうですが。例の父親役は「プロジェクトX」のナレーターとして有名な
田口トモロヲ氏です。関係ないですが、「田口トモロヲ氏はステージの上でパフォーマンスとして、
炊飯ジャーにうんこした」(大槻ケンヂ『リンダ・リンダ・ラバーソール』からの情報)というのは本当でしょうか?ちなみに映画は
当然R-15なのでよい子は見に行かないようにね。
恐怖マンガの大御所楳図かずおの送る「ネオ・ファンタジー・ホラー」。神の左手、悪魔の右手を持つ想という少年が主人公。なにが飛び出すかわからない展開、読者に
予想すら許さない破天荒なストーリー。楳図マンガの到達点。
こんなに怖いマンガを僕は今まで読んだことがありません。僕の中の
ベスト・オブ・ホラーです。まず、最初の二ページを開いたとき僕は
失禁しそうになりました。
少女の顔面の内側から鋏の双刃が目の玉を食い破って突き出している!飛ばしすぎです、楳図先生!しかし、5ページにわたって苦しむ少女のそれが、次のページで
主人公想くんの夢だとわかり腰砕け。「ええー!?」と思わず突っ込んでしまいました。
「笑い」の起源は恐怖の克服だったという説があります。そういう意味でいえば、このマンガ、恐怖に耐えるために、
突っ込みながら読むとかなり面白いです。
ホラーというジャンルは
不条理の連続で構成されています。恐怖というのは「未知のもの」です。例えば、貞子がテレビの中から出てくるのがなぜ怖いかというと、それは
まったく予期できないことを彼女がやってのけたからと思うのです。
現実の法則を無視した在り得ない行為。これがホラーの骨子だと思います。
しかし、同時にこれは
ギャグの構造にも非常に似ているのです。お笑いの種類には二つあると個人的には考えます。一つは「あるある系」のギャグ。共感の笑いを呼ぶタイプです。(例えて言うと
テツアンドトモ。みんな覚えてるかな?)そして、もう一つは
意外性の笑い(もちろん、この意外性のバランスの取り方が一流のコメディアンか否かを分けるわけですが)。マンガで例を挙げれば『すごいよ!マサルさん』におけるマサルの
不条理な行動。
そう、ホラーマンガは後者の構造に非常に似ているのです。ただ、違うのは繰り出した不条理が笑える場面であることを明示してくれるフーミン(突っ込み役)がいない、と。だから、その不条理な場面を
自分(読者)が突っ込んでみる。すると、もう大爆笑です。特に影亡者に守護霊を食われた人々の不運さはほとんどコントです。
学校の屋上。カッターで少女を脅している不良少女二人。影亡者に守護霊を食われたその直後から彼女たちを不幸が襲います。→
なにが起きたのかカッターが偶然一人のほうの首に刺さり(たぶん少女は死んだ)、刺してしまった方の少女は動揺してその場から逃げ出しますが、階段を踏み外し転落。のみならず、落ちた先に消火器が!顔面から突っ込む少女。消火器が顔にめりこむ!だけでなく、
消火器発射!彼女の口の穴、鼻の穴、耳の穴から消化剤が勢いよく噴射!(うわあ!)
影亡者に取り付かれた少女の家へ近づく霊能者。しかし、
なぜか一歩近づくごとにひどいことになっていきます。まず、右手を破損。次に、
股ぐらから大量の血が!さらに近づいていくごとに
股ぐらから一つずつ内臓を落としていきます。
大腸、小腸、十二指腸、さらに胃まで!その霊能者を映画では主人公になっている想のお姉さんが
内臓ごと引きずって逃げます。股ぐらから繋がった内蔵のせいで霊能者は全長三メートルくらいになっています。しかし、なにより驚くべきことは
その霊能者が生きていたことではないでしょうか。しかし、こんな修羅場を生き残ったのにも関わらず、近くで作業していた巨大クレーンが
偶然倒れてきてぺしゃんこになって死にました。
影亡者にむかってボウガンの矢を発射する
さぶろうた(なぜ平仮名?)。矢は外れ、鉄橋の柱に当たり、
ありえない跳ね返り方をして戻ってきて、フロントウィンドウを突き破り、後部座席の想の母親に命中。(この場面がベストシーンです。)
作者の意図していないところで笑ってしまうのはいけないことかもしれませんが、突っ込まずにはいられない。いい意味でも悪い意味でもそれが楳図マンガの魔力。ちなみに話題の『神の左手悪魔の右手』Tシャツは
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