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女装島田倉庫 金田一蓮十郎『ニコイチ』

dca66fbf.jpg えー、久々の女装マンガです。今日は金田一蓮十郎『ニコイチ』。『ヤング・ガンガン』に連載中です。

 男だけど・・・女!?女だけど・・・男!?
 このお話は須田真琴29歳の愛と苦難の物語です。彼はごく普通のサラリーマン。ところが血の繋がらない息子・崇の前では女装して美人ママを演じていた。偽りの母子家庭なんてちょっとワケありな二重生活をする彼だが、気になる女性がいたりする。ある朝、その女性が満員電車で痴漢に遭遇している現場に遭遇した・・・!(単行本裏のあらすじより)

 子持ちで未亡人(という設定)の女装マンガという女装をメインにしたマンガでは珍しいタイプではないでしょうか。多くの場合、女装はだいたい少年期の人物、いわば中性的な時期における男性の心の揺れを描くものですが、体も成熟してしまい、また立派な社会人である主人公が女装するというのは男性作家が描く場合、自らの身体を考慮してしまうので、躊躇してしまいがちになるのかもしれません。ただ、金田一さんは女性なのでそのへんの葛藤はないし、少女漫画に見受けられるように、理想化された男性というのは体毛がなくて肌がツルツルだったり、妙にほっそりしていたりする中性的キャラクターなので、この主人公が生れたのではないかと思います。もちろん、彼は女性が好き。そうでないと、女装というカテゴリーではなく、オカママンガになってしまいます。
 男性としてはイマイチな真琴だが女として、母としては完璧な女性を演じている。この辺、表現しにくいのですが、変身願望(理想化された人格=演技)をうまく捉えていますね。挙句、息子の担任の男性教諭に女として惚れられちゃったり、好きな女性に女として惚れられちゃったり、といった悲劇が生じますが、これこそ女装マンガの醍醐味ですよねー。
 ただ、真琴の場合、ショタ系の主人公が『ハヤテのごとく!』のように、ふりふりで可愛くという感じではなく、背の高い主人公がスラッとして意志の強い気丈な女性に変身します。ここにも男性の描く女性像と男性像の違いがでていると思います。また、恋愛に関してもシビアな視点で描かれていて、やっぱり女性的な観察眼がこの作品を独特のものにしていると思います。
 ところで、どうでもいいのですが今日のレビューの題名は椎名誠のSF代表作『武装島田倉庫』をもじったものです。女装と武装って、音韻だけでなく、なんか語義的にも近いものを感じてしまうのは僕だけでしょうか?・・・・・・僕だけですね。
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