音楽ではカバー作品というものをよく耳にします。個人的にはあまり好きではありません。なんだか、公開カラオケという感じで、そこには新たな解釈がないような作品が多いからです。カバーを出す意味、意義、それらに納得できるだけの理由がわかる作品でないと原曲のイメージまで損なってしまう気がします。ただ「この曲が好きで聞いてもらいたかった」という理由でリリースするのは余りにも安易ではないでしょうか。そんな持論を展開しつつ、レイザーラモンHGの「ヤングマン」を口ずさんでしまう私なのでした。♪すべての道は二丁目に通ず(まあ、新解釈といえば新解釈なのかも)・・・・・・。
さて、音楽だけではなく、漫画にも当然カバー作品は存在します。最近では手塚治虫の『鉄腕アトム』の「地上最強のロボット」をカバーした『PLUTO』なんかが有名ですね。あとはアニメ化に便乗した少年チャンピオンが掲載している『ブラック・ジャック』のカバー企画なんてのもありました。
しかし、あの国民的マンガを、コアなファンを持つ、あの作家がカバーしていることを知っている人は意外と少ないんじゃないでしょうか?カバーされた作品は藤子不二雄F先生の代表作『ドラえもん』、カバーしたのは『ピンポン』『鉄筋コンクリート』などで有名な松本大洋です。
青年になったのび太のもとへ、子供ののび太がタイムマシンを使って、やってきます。青年のび太は小難しいことを考える頭でっかちなやつになっていました。それに大して子供のび太はあくまで無邪気です。青年のび太は小難しいことを考えすぎて、少しおかしくなりかけてます。そこにもう一人ののび太がやってくる・・・・・・。
こういったお話です。これは『ピンポン』連載の前に『COMIC CUE』に掲載されたものですが、のび太は『ピンポン』の登場人物スマイルそっくりです。ちなみにジャイアン、スネオ、しずかちゃんもいくらか
リアルな感じになっています。さて、問題のドラえもんは・・・・・・。公園の水のみ場のコンクリートの部分にうずくまってじっとしています。
毛づくろいしたり、木の陰に身を潜めたり、欠伸をしたりしています。っていうか、耳がないのと、模様がおかしいだけで、
普通のネコです。考えてみたら、そうかもしれません。22世紀の最先端技術で作られたロボットがあんなデザインだったら、私にしてみれば、なんだか腰砕けです。ああ、でも、ドラえもんは量産型なので安価に作るためにあんなデザインなのかも?まあ、最終的には個人的な見解によりますよね。私は松本版ドラえもんが大好きですが、私のバイトの後輩は
「気持悪い(きもい)」と言い切りましたから。そういえば畑健次郎『ハヤテのごとく!』でも似たようなネコが登場していました。
まあ、賛否両論あるでしょうが、私はこの作品が大好きです。それはこの作品が『ドラえもん』というマンガの本質を捉えることに成功しているからだと思います。素直な感情表現ができること。素直に物事を受け取ることができること。それらを見事に表した
「あおいそら」のコマは私に忘れていたなにかを思い起こさせてくれました。松本大洋版『ドラえもん』。単なる名作の焼き直しではなく、そこには新たな『ドラえもん』の発見がありました。
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