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心地よい胸の痛み 志村貴子『放浪息子』

3ebd33e8.jpg今日は現在も連載中の女装漫画の名作、志村貴子の『放浪息子』です。

 二鳥修一は女の子に間違えられるほど可愛い顔した男の子。転校した先の小学校の女の子たちにむりやり女の子の服を着せられたときに彼の中のなにかがめざめてしまった。
 一方、同じクラスの高槻さんはスラリとした長身の女の子。男の子っぽいので「高槻くん」と呼ばれている。彼女は自分が女の子なのが嫌で、兄の学ランを着て遠出をしたりしている。
 修一くんに女装をすすめる女の子千葉さんのせい(故意ではないが)で、女の子の格好をするのが高槻さんにばれた修一くんだが、男装癖の高槻さんは修一を遠出に誘う。高槻さんが男の役を、修一くんが女の役をして、カップルに扮して街に出たのだ。
 秘密を共有した二人だが思春期という年代はいろいろ難しくて・・・・・・。

 女の子の服を着るのが好きな二鳥修一(にとりん)。自分が女の子なのが嫌な高槻よしの(高槻くん)。修一に女装をすすめるちょっと変わった女の子千葉さおり(千葉さん)。修一の女装仲間有賀誠(マコちゃん)。友人どうしの関係に気を使いまくりの佐々かなこ(佐々ちゃん)。
 小学校高学年から、中学生という微妙な年齢の少年少女たちの揺れる気持と人間関係を描いた素晴らしい作品です。この作品の印象を一言で表すと「痛い」。仲間のなかで発生する恋愛で分裂してしまう仲良しグループ。異性になるのに憧れる男女。思春期特有の悩みたちが、チクリと胸に突き刺さります。
 この作品を読めば普段は自分にその気はないと思い込んでいる男性も自分の中の乙女な部分に気づいてしまうことになると思います。僕がそうでした(カミングアウト)。ただこの年になってしまうと常識というのが身につきすぎていますので、実際に女装するという行動も起こすしませんし、する気にもなれません。似合わないのもわかりすぎていますしね。だから、虚構(フィクション)で補充します。女装をフィクションで楽しむというのは自分の中のナルシズムを登場人物に託して満足するという行為なのではないかと個人的には考えているのですが。女装するキャラクターが「可愛い」という設定はだからこそ存在しているのかと。
 とにかく素晴らしいマンガです。読んでない方は一度読めば価値観が変わるかもしれません。
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