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真に心から「巨匠」と称せる 大友克洋『童夢』

5e79eee1.jpg 漫画史上に残る大友克洋の傑作SFホラー。日本SF大賞、星雲賞受賞作。1980-1981年、「アクションデラックス」「スーパーフィクション」(双葉社)に連載。

 巨大な団地内で起こる奇妙な死亡事件の数々・・・・・・。自殺者と思われる者5名、事故扱い7名、事件扱い3名、変死9名。捜査本部の部長も死亡し、謎は深まるばかり。事件の超常性に不信の念をもった刑事が団地の手前まで連れて来た霊能力者は恐怖におののきながら刑事にこう忠告する。
 「子供よ 子供に気をつけなさい
 そして、恐怖の一夜が始まった・・・・・・。

 手塚治虫と並んでエポックメイキングな存在であるといわれる大友克洋。緻密な描き込み、リアルな描写。そして、読者の想像を超える世界を現出する創造力。彼の魅力を余すことなく感じつくせるのがこの作品です。
 最も注目すべきはやはりサイキック・アクションシーン。その構図のダイナミックさ、説明を要さない画力、特に壁に押し付けられるあのシーンがすごい。
 物語への入り方、終幕の引き方があくまでもさりげなく、日常と異界の差が曖昧になり、さらに恐怖を際立たせている。そして、物語の重要なテーマである「子ども」。これ以前の作品でも子どもに対する「わけのわからないもの」「無垢ゆえの残酷性」ということが描かれてはいたが、この作品にそれが結実されたといえる。そして、それがあの『AKIRA』へと繋がっていくのだ。
 僕の持っている単行本は1997年のもので第50刷。発売以来二十数年経つがさらに版を重ね続けている。これだけロングセラーを続けているというのが作品のものすごさを証明していると思います。
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