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SF読もうぜ(349) 半村良「石の血脈」


 アトランティス、暗殺集団、赤い酒場、巨石信仰、狼男、吸血鬼、不死の生命…。この本を手に取ったあなたは、これらの言葉からどんな物語を想像するだろうか。失踪した妻を捜し夜の街を歩く建築家・隅田、展示場から消えたアトランティスの壷を追うカメラマン・伊丹。彼らの周囲には、次第に不可解な出来事が起こり始める。一見脈絡のない事象を縦糸に、男女の愛を横糸に紡ぐ、半村良の伝奇ロマン。(集英社文庫版あらすじ紹介より)


 セクシャル・バイオレンス・サスペンス・オカルト・ミステリー・SF!
 と、印象を語ればこのような外来語がずらずらと並ぶ。

 不自然な死をとげた建築家の残した遺稿の中に古代イスラームの暗殺教団に関わるものが?事件に巻き込まれていく男たち。徐々に明らかになり、そして混迷を深めていく謎。アトランティスのクロノスの壺、貞淑な妻の突然の失踪、赤い酒場、公団住宅への圧力・・・。

 吸血鬼や狼男伝説などのオカルトを現代的に解釈しながら突き進んでいく物語。「これは面白い!」と心の中で叫び続けながら読み耽りました。多少、官能シーンがくどすぎて辟易するところもありましたが、それも人間を超えた存在になった故のこと。エロ・グロ描写に背筋も凍るSF大作でした!

 ヴァンパイアの仲間に選ばれ、人間性を失っていく隅田の姿。そして、狼男と化し、最後に復讐を遂げる伊丹。ヒトならざるものの感覚とはいったいどのようなものか、僕自身選ばれたら、それまでの人間の心のプログラムを失い、向こう側に行ってしまうのか、そんなことを考えてしまうラストでした。でも、考えたら、ヴァンパイアの仲間入りするのは、その人間の容姿が整っていることが条件だから、僕は入れてもらえないですけどね・・・(フン!)。エリート主義との対決という一面も見える良作でありました。
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