ネコに変身してしまった小学生清くんが飛び込んだのは、銀座ネコVS.築地ネズミの大戦争の真只中だった。清くんは三毛のオスとしてネコ軍団を率いることとなり、同級生秋子くんも加わって大騒動。どうやらネズミ軍団の長も同級生の変身した姿らしい。彼らの変身劇には世界的陰謀が隠されていて事態は急変。(講談社文庫 あらすじ紹介より)
同著者の「四十一番の少年」を読んで、いたく感動し、久々に愛読書である本書を開きました。
主人公清くんのお母さんが、清くんが寝転がっているのを見て、「ごはんを食べた後に寝ると牛になるよ」というところを、「ごはんを食べた後に寝ると猫になるよ」といったというのが発端。かわいらしくてよいじゃないですか。
そして、猫になった少年は、銀座の猫社会の中に飛び込んでいき、そして、築地ネズミとの百年に渡る戦争へと巻き込まれていく。途中で憧れの女の子が猫に変化したり、敵のネズミの中に親友がいるのを発見したり、戦争の背後にある大きな謎と存在に、清という少年が挑んでいくというお話。
井上ひさしの動物が主人公のものは、たいへん面白くて、これもその中のひとつ。猫の本能に支配されてしまう清くん、秋子くん。ネズミの本能に支配されてしまうのは、良三くん。さらに猫や鼠に関する豆知識やトリビアがずらりと並べられ(羅列というギャグの方式だそうですが)、著者の碩学ぶりがいかんなく発揮されています。猫のキャラクターも強烈なのが多く、猫八・電気ネコ・トラネコ大将など、名前を書くだけで楽しそうじゃないですか。彼らの活躍や非業の最期に(不謹慎ながら)大笑いです。アニメーションの映画にしたら、とっても楽しめそう。
「宗教」という大きな主題も見られ、カトリックの養護施設で育ち、洗礼まで受けたという著者の宗教観もわかります。僕自身、友人が宗教者だったもので、このテーマに世間一般よりも深い関心があり、シンパシーを感じたので、中学生で初めて読んで以来、こんなに繰り返し読み続けているのでしょう。現在、「鬼灯の冷徹」や「聖☆お兄さん」などの神仏ギャグが流行しているようですが、そういったものが好きな人にはぜひオススメです。あれよりもディープなギャグがこの本の中には、たくさん詰まっています。UGOWなる組織が戦争を起こした理由にうなり、カタルシスを感じるラストに快哉を叫ぶ。何度読み返しても、すばらしい読後感です。
娯楽性あり、そして、考えさせられる部分もある、少年の生真面目さを持つ人にぜひお読みいただきたい本であります。
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