僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。二人の人間を殺した手でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供―戦争を仕事に永遠を生きる子供たちの寓話。
この正月に押井守監督の映画『スカイ・クロラ』を見ました。でも、なんだかよくわからなかったので、原作小説を読んでみました。そして、久々に「やられた」と思いました。
永遠に大人になれないキルドレ。それは、まるで僕たちのようだ。
モラトリアムとブログのタイトルにつけるだけあって、自己のアイデンティティを未だに確立できていない僕にはこの設定はリアルすぎるし、シンパシーが強すぎます。
中途まであまりに映画の通りなので(いや、逆に映画が小説の通りなのですが)、まさか✕✕が✕✕して✕✕するとは・・・・・・。いやー、びっくり。
「死」というものが隣り合わせの現実だからこそ、「生」というものが相対的にあぶりだされる。生きているという実感が薄い社会の中で、僕たちは泳いでいる。なんとなく。それは、作中に描かれるように単なる「退屈凌ぎ」にすぎないのか?
「こども」のままでいるということが強調されるからこそ、「大人」と呼ばれる身分になった自分が浮き上がってくる。もう時間は戻らない。
文体が時々詩のようになり、詩が好きな僕にはたまりません。作者は詩集も出しているようですし。一番お気に入りなのはこの部分。
僕はまだ子供で、 ときどき、右手が人を殺す。 その代わり、 誰かの右手が、僕を殺してくれるだろう。 それまでの間、 なんとか退屈しないように、 僕は生き続けるんだ。 子供のまま。もし、子供だった時分に、これを読んでいたら、僕はいったいどう思っただろうか?そういうことが、今ふと頭をよぎりました。
「よくわからないけど、すごいな」と思えた小説でした。読んでいない方にはおすすめです。
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