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SF読もうぜ(219) ジョン・クリストファー『トリポッド 2 脱出』

img163.jpg トリポッドが世界を支配するようになってから、およそ百年。みんなキャップをかぶり、平和でのどかな生活をおくっている。でも、ほんとにこれでいいんだろうか?戴帽式を間近にひかえ、そんな疑問で頭をいっぱいにしていたぼくは、ある日一人のはぐれ者から驚くべき話をきいた。トリポッドは異星からの侵略者で、海の向こうの白い山脈には自由な人びとがいるという。ぼくは従弟のヘンリーとともに、自由を求め旅にでるが!?

 楽しい!

 トリポッドが支配する世界。子どもは14歳になると、キャップを与えられて、トリポッドのしもべに変ってしまう。そんなことに疑問を持った少年が、ある日、キャップを被った振りをしたはぐれ者(キャップに適合できなかった人びと)に化けた「自由市民」に、キャップを被らず、トリポッドと戦う人々の住む「白い山」のことを聞き、旅にでる。すてきな出だしだし、典型的なファンタジーだと思いました。あと、思ったのはキャップ(アミガサダケ)を被った反逆児が旅に出る『地球の長い午後』と、逆だなあということです。

 農耕世界に戻ってしまい、周辺のことしか気にならなくなった大人たち。旅に出た子どもたちは昔の人間が残した文明の残滓に驚異を感じます。特に廃墟を歩くシーンがいいじゃないですか!
 あんまり関連はないですが読んでいて、ザ・ハイロウズの「モンシロチョウ」という歌を思い浮かべました。「はだかになればいいのか ポコチン出せばいいのか」という出だしで始まる歌ですが、「存在してるだけじゃ 退屈で嫌になっちゃうよ」、つまり「自然に帰れ」とエコを必要以上に叫ぶ人に対して嫌だといってるんだと思います。そして、地球をキャベツに、人間をモンシロチョウに例えて、人間は文明を持たなければやっていけないじゃないか(キャベツを食べなきゃモンシロチョウは生きてはいけない)、それよりも第三次世界大戦を心配しろよ、という内容です(まあ、あくまで僕の解釈で、まったく逆に解釈することもできます)。都会っ子の一人として、僕はその考えには賛成。大切なのは自滅しないような文明と自然のバランスであると思います。

 人間の自由意志は様々な弊害をもたらしてはきたけど、やっぱり必要であるというのが、この作品を通して出てくる主題でしょう。やはり、自然を圧して環境を作り変えてきたヨーロッパ的な考えなんですねえ。真の意味で自由が根付いていない日本人には憧れる境地です。誰かの押し付けではなく、自分の頭で考えて行動を決めなさい。そう思うとこのお話は基本的には革命話のような気がします。

 トリポッドに追われて逃げる子どもたちはついに「白い山」にたどり着きました。途中、肌に縫いこまれた発信機を麻酔なしでナイフで切り取ったり、好きな子が実はキャップを被っていてトリポッドに徴収されることがわかったりと、辛いできごとを乗り越えてきました。それでも、まだまだ茨の道が彼らを待っているようです。「ガンバレ!」と心中で応援しつつ、速やかに次巻に移行したいと思います。
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