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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(267) スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』

 すみれ色の靄におおわれ、ものうげにたゆたう惑星ソラリスの海。だが、一見何の変哲もなく見える海も、その内部では、一種の数学的会話が交わされ、自らの複雑な軌道を自己修正する能力さえ持つ、驚くべき高等生命だった!しかしその知性は、人類のそれとはあまりにも異質であった。いかなる理論をも、いかなる仮説をも受けいれず、常にその形を変え、人類を嘲笑するかのようにつぎつぎと新たなる謎を提出する怪物――生きている〈海〉。人類と思考する〈海〉との奇妙な交渉を通して、人間の認識の限界を探り、大宇宙における超知性の問題に肉薄する傑作!

 素晴らしい。

 オールタイムベスト1。そういわれると逆に読みたくなくなるというねじれた精神を持つ僕ではありますが、ちょっと読む機会ができたので手に取ってみると、これが非常に面白い。タルコフスキー、ソダバーグの二つの映画は非常に眠かった覚えがあるけれども、原作は謎に次ぐ謎。謎が新たなる謎を呼び、そのスリルが読む興味を持続させ、少々難解であるかもしれない内容が全然身に堪えません。

 自殺したはずの恋人(ハリー)の複製が現れる。彼女は自分自身の存在に戸惑い、最後には自ら消滅する道を選びます。その神秘性もさりながら、延々と語られる「ソラリス学」という惑星ソラリスに関する学問の歴史もいい。人間にとってはなんなのかわからない海に現れる巨大なオブジェ。自らの軌道を修正してしまうその力。それをどう理由づけることができるのか、それともそもそも理由など存在しないのか?人間の不可知性を感じてしまうラストは胸に迫るものがあり、哲学者としてのレムという巨人に畏怖の感情を覚えます。

 レムの作品は『砂漠の惑星』や『宇宙創生記ロボットの旅』、泰平ヨンやその他の短篇しか読んだことがありませんが、三部作といわれる中で残っている『エデン』も非常に読みたくなってきました。ラストで神に対する概念を語るところなど、神に対して人間というものの存在を根底から見直し、宇宙的規模の視点から人類というものを考える。この思考実験とか、自らが卑小な存在であることや常識を揺り動かされることへの不安感・・・・・・。SFというジャンルの持つ特性がもっとも発揮された、最もSFらしい、SFの中のSFであるというふうに感じました。

 素晴らしさにしばし呆然とさせられる読後感。SFってほんとうにいいものだなあと再確認できました。
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