恐竜はなぜ滅んだのか?この究極の謎を解明するために、二人の古生物学者がタイムマシンで六千五百万年のかなた、白亜紀末期へ赴いた。だが、着いた早々出くわしたのは、なんと言葉をしゃべる恐竜!どうやら恐竜の脳内に寄生するゼリー状の生物が言葉を発しているらしいのだが、まさかそれが「***」だとは・・・・・・!?次々に披露される奇抜なアイデア、先の読めない展開。実力派作家が描く、心躍るアドベンチャーSF。
ミステリ仕立ての楽しい作品です。
「訳者あとがき」から書き出しますと、以下の謎が提示されます。
1 恐竜はなぜ絶滅したのか。
2 恐竜はなぜあれほど巨大化できたのか。
3 白亜紀と第三紀の境界になぜイリジウムの豊富な地層があるのか。
4 恐竜の肉はうまいのか。
5 火星はなぜ死の惑星になったのか。
6 時間旅行はなぜ可能でなければならないのか。
とにかく、ただタイムスリップして恐竜と戯れる「ジュラシック・パーク」的な作品と思いつつ読んだら大間違い。なんといきなり恐竜が喋りだしちゃうのですから。この作品は、SF作品のコラージュになっています。タイムスリップもの(同時にパラレルものでもある)、侵略もの(寄生生物)、ファースト・コンタクトもの、宇宙SFと、さまざまなものが混ざっています。恐竜が滅びる様子に、僕は謎解きSFの白眉『星を継ぐもの』のような感覚を少し味わいました。なにしろ謎解きがダイナミック!
それだけでなく、作者はパラレル・ワールドを使って、物語にテーマを持たせようとしています。それが、「決断」というもの。違う時間線と現在の時間線の比較を行うことで、先延ばしにすることを断罪しています。ただし、テーマが重過ぎて、僕は軽々しくうなずくことはできませんでした。そもそも、妻を寝取られた親友と二人だけで、過去へ遡行するという設定自体があまり好きになれませんでした。ものすごく気まずいんだもん。
アシモフやブラッドベリの作品を思い起こさせる、なんだか懐かしい雰囲気の作品でした。
PR
COMMENT
SF紹介 ―テクニカラー・タイムマシン―
ヌルは、筒井康隆のSF同人誌の名前でもありましたね。ぼくは昔読んだ『ゼロの怪物ヌル』というジュヴナイルSFで、『ヌル』はドイツ語で『ゼロ』を指す言葉だと知り、今回なんとなくHNに使わせてもらった次第です。ちなみに好きな作家は、広瀬正、光瀬龍、眉村卓、豊田有恒などです。
『さよならダイノサウルス』、読ませて貰いました。なかなか白そうなSFですね。そういえば前に訪問した時に、ぼくのお勧めSFを紹介すると言いましたよね? 今回の時間旅行SFにちなんで、今夜はハリイ・ハリスンの『テクニカラー・タイムマシン』をご紹介します。
主人公は映画監督のバーニイ・ヘンドリクスン。彼の勤めているクライマックス映画社は、倒産寸前の危機に陥っていました。危機を乗り越えるには、空前絶後のヒット作を製作せねばなりません。
そんな折、バーニイが立てた計画は、まさに奇抜でした。ヒューイット教授が発明したタイムマシンで、ロケ隊を11世紀のオークニー諸島に送り込み、現地オールロケで『ヴァイキング・コロンブス』という伝記映画を撮影するというものです。これなら過去でいくら撮影が長引いても、『現在』の完成予定日にはなんら支障もありません・・・。
しかし、11世紀に到着した彼らを本物のヴァイキングが襲ったことから、事態は一変します。主役の俳優が重傷を負い、撮影を降りると言い出したのです。そこでバーニイは現地で仲良くなったオッタルというヴァイキングの大男を代役にして、撮影を続行しました。しかしこの男、ギャラはウイスキーじゃないと駄目! 演技に熱を入れすぎてセットを壊し、終いには映画のヒロインと粗筋ソッチノケで恋仲になってしまう始末。
しかも過去での長期撮影は、予想だにしなかったタイム・パラドックスを生み出してしまいます。果たして、映画は無事クランク・イン出来るのか? そして、人類の歴史は???
文明人であるバーニイと、野生の人オッタルとのやり取りは、何度見ても吹き出してしまいます。しかも単なるSFコメディではなく、独特の時間旅行の理論も出てきて、思わず唸ってしまうこと間違いなし!
僕が持っているのは、神保町で買ったポケット・ブック版ですが、文庫版も存在します(その表紙絵と挿絵は、あのモンキー・パンチ先生!)。残念ながら両方とも既に絶版なので、図書館で借りるか、古書店で探すことをお勧めします。
また、時間旅行SFにはもう一つ、広瀬正の『マイナス・ゼロ』という傑作もありますが、それはまた別の機会に。
ではまた、お会いしましょう。
お休みなさい。
懐かしい作品です
銀背の魅力
そうですか。既に『テクニカラー・タイムマシン』は読まれていたんですね。あれは実に面白いですよね。ハリイ・ハリスンで好きなのはそれと『銀河遊撃隊』です。
ぼくは銚子の方に住んでいるのですが、時々用事で東京に行き、帰りに神保町でSF小説を探したり、秋葉原で特撮映画のDVDを買うのが楽しみです。
特に最近は、ハヤカワSFシリーズ―通称『銀背』という古書に嵌まっています。
去年、図書館でルイス・パジェットの『ミュータント』を読んだのがきっかけで、銀背蒐集を始めました。多少値は張りますが、神秘的な表紙絵と、愛用のジャンパーの内ポケットにスッポリの手頃なサイズが気に入っています。特に、愛犬の散歩中に読み歩くのが至福の時です。(勿論、車には気をつけています)
A・T様も、銀背を読まれたことはありますか?
青背と藤背止まりです。