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SF読もうぜ(50) アーシュラ・K・ル・グィン『辺境の惑星』

c5346364.jpg 五千日も続く冬の到来を前に、竜座の第三惑星では大混乱が生じていた。原住種族ヒルフのなかでも蛮族として知られるガールが、他部族の食糧を略奪しに北から移動してこようとしていたのだ。この惑星に移住して、何世代もたつ異星人ファーボーンは、ガールの大軍に立ち向かうべく、ヒルフの温和な部族トバールと同盟を結ぶ。だが、ファーボーンの頭アガトとトバールの族長の娘ロルリーが出会ったとき、事態は大きく展開するのだった・・・・・・異種族間の相克を、ル・グィンがみずみずしい筆致で鮮やかに描いた、『ロカノンの世界』につづく長篇第二作。

 よかった!

 『ロカノンの世界』や、名作と言われている『ヴァーミリオン・サンズ』の『コーラルDの雲の彫刻師』を読んで、「これって言われてるほど面白いか?」と疑念を持ち、自分のSF読者としての資質を自問していたが、この作品に救われたような気がする。

 この作品は大好きな籠城ものです。黒澤明監督の『七人の侍』のようなお話ですねえ。北の蛮族ガールが野武士、迎え撃つ農民達、といった構図。ただ、『七人の侍』の勝四郎と農民娘と違って、二つの異なる種族間での恋愛は成就しましたが。

 ファーボーンの長アガトとトバールの娘ロルリーとの恋愛を、二種族間の精神的融和の象徴として描いているところに作者の巧さが見えます。それとしても、まだ差別的な感情が、最後まで残っているところに、あっけらかんとした作品にはない、渋みがあっていいです。
 ファーボーンの肌の色が黒くて、ヒルフたちの色が白いというところにも、グィンの人種に対する考え方が表れていて、感動すら覚えますね。今度の『ゲド戦記』ではその点に対して(その他の点でも)怒ってらっしゃるようですが。

 とにかく、いい作品でした。
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