将軍がいった。「これは危険な任務だ。必ずしも志願しなくてもよいが、任務の重要さだけは知ってもらいたい」やれやれ、つまりいやおうなしに志願しろってことだ。ぼく、米国情報部員マチュチェック大尉は、かくて天下分けめの大作戦にとびこむはめになった。相棒はとびきりの美人、魔女のグレイロック大尉。トロールバーグを占領中のサラセン教主軍に潜入し、彼らの魔人を無力化するのがその任務だ。連合軍の大反撃が成功するかどうかは、ぼくら二人の活躍にかかっていた・・・・・・科学の代わりに魔法が発達したもう一つの地球を舞台に繰り広げられる傑作冒険SF
楽しい!
前回、短篇だけ(「大魔王作戦」)読んだときは、このオッサン、アメリカ万歳なのかなあと思ったのですが、けっこう別の短篇でフォローしてあって、びっくりしました。でも、保守系アメリカ人であることには変わりないんですけれど。
『タウ・ゼロ』以来のポール・アンダースンですが、まるっきり雰囲気が違うので、少し驚きがありました。献辞が「――魔法を最初に法人化したロバート・A・ハインラインとかれ自身の赤毛のヴァージニアに」とされています。科学ではなく魔法が発達した世界、というのは実に魅力的な設定ですし、SF界特有の世界設定の共有みたいなものがみられていいですねえ。この前、『ゾンビ』のリメイクを観に行ったのですが、「死者がよみがえって襲ってくる」という同じ世界設定でも「ヴァリエーションでここまで見せるぞ!」という気概が見られてよかったです。この作品もそういった感じなのでしょうか。
アメリカのエンターテイメント系のヒロインというのは、ある種の傾向を持っていて、ヴァージニアもその典型的なタイプです。グラマーで気が強い、けれど妙なところで女らしい。まあ、嫌いではないのですが。しかも、魔女と来た日には、惚れないわけがありません。表紙のヴァージニアは幼く丸っこく書かれていますが、きっと本場のSF画では、もっとキツイ顔をしているタイプに違いありません。
主人公は狼男。ウルフガイです。フラッシュライトを使って変身します。特によかったのは狼男になったときに、人間の理性が吹っ飛んでしまいそうになるところの心理描写でした。こういう異常心理というのは普通小説にはない味わいで楽しいなあ。
小難しく考えないですむエンターテイメントの楽しみを久々に味わいました。やっぱり、小説は第一義的に面白くなくちゃね!と思った一冊でした。
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