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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(334) ◎豊田有恒「退魔戦記」

 日本SF作家クラブ編『日本SF短篇50 volume1』収録。

 脇田家に受け継がれている一冊の書物。その古文書には「退魔戦記」という異様な題がつけられている。しかし、その古文書には古びた様子もなく、しかも、ポリスチレン・ラテックスの改良紙のようなのだ・・・・・・

 鎌倉時代のものとされるその古文書を父の死によって受け継いだ俊夫は、父の生前の日記でタイムマシンに関わる話だと知る。この用紙は現代の技術でなく、未来の技術で作られたものにちがいない。そして、古文書の伝えられた寺の僧と父が口語訳したその古文書を俊夫は読み始める。
 鎌倉の僧、蓮清は若い頃、武家の河野家に仕えていた。伊予三津浜の港で、貿易船を迎えていた河野通有、脇田清治(蓮清の俗名)らは、白銀色の丸い奇妙な物体が海岸にあるのを見つける。中からは異様な風体の者たちが三人現れた。彼らは蒙古に支配された国から逃げてきたといい、ともに戦い、蒙古を滅ぼそうと語った。そして、それには我らの力がなければできぬとも。その証拠として彼らは光火箭(ひかりびや)という恐ろしい道具で松の木を一瞬で消し去った。協力して蒙古と戦うこととなった河野一党は、彼らから訓練を受けることとなった。
 現れた三人、けん、りゅう、りえは退魔船に乗り、千年後の未来からやってきたという。そこでは蒙古が世界の大部分を支配しているのだ。蒙古の襲来により、九州を支配された日本は、その後全土を蒙古に支配されてしまうこととなる。退魔戦を使い、過去にやってきた彼らはその歴史を覆すつもりなのだ。
 ついに決戦のときはやってきた。殻爆雷や光火箭などを駆使して、彼らは蒙古の退魔船と渡り合う。そして、彼らは勝利した!日本は救われたのだ。しかし、いつまた時間巡邏隊がこの時代に現れるとも限らない。そこで、彼らは殻爆雷をつんだ退魔船を海中に設置し、四次元震動が起きれば爆発するようにセットしておいた。
 戦の終わった一月後、清治は通有と出会ったが、通有は三人の未来人が来てからのことをすべて忘れてしまっていた。そして、それは通有だけでなく清治以外の者は何も覚えていなかったのだ。七年後、再び攻めてきた蒙古は神風によって敗れ去った。もちろん、その正体は殻爆雷であった。
 出家し八十になろうともする清治、今は蓮清と名乗る僧は、光線筆でこの話を記したとし、文章を終えた。



 時間ものの名作。

 弘安の役、文永の役という蒙古襲来事件。神風(台風)が吹き、日本が勝利したこの戦に未来人が介在していたのだとするこのお話。たいへん面白い。我が近所には蒙古襲来の折、敵国降伏の祈願をした神社があり、この前お参りに行ったばかりだったので、さらに感慨がわきます。

 退魔船(taimasen)はタイムマシン(time machine)を聞き違えたものでしょう。そう考えると退魔戦記というのは、一見蒙古を「魔」と見立てたものとして考えてしまいますが、タイム戦記、時間を超えた戦いということなのでしょうね。蒙古が支配する未来を変えるためにやってきた三人の未来人と手を携えて戦う鎌倉武士たち。大音声で名乗りをあげながら敵船に侵入していく鎌倉武士がかっこよくてなりません。

 さて、時間ものらしいロマンスもありまして、主人公清治は未来人の女性りえに恋をしてしまい、二人は晴れて海岸で結ばれるのですが、なんとそのりえ女、戦後にはりゅうとニャンニャンしているところを清春が見つけてしまいます。「私たちは契約異性と生活していく習慣はもうないのよ」といわれ、愕然とする清治。そして、りえは未来へ去っていく。しかし、りえだってけっして幸福そうには見えないのだ。幸福な恋の形にどの時代であっても、やはり、四苦八苦するんだろうね、と現代人の僕は思ってしまいます。

 さて、出家した蓮清は仏教的な観点から、また、中世的な思想から、この事件を定義してみせます。

 人の世は、変遷さだまりなく争いの絶えぬものである。諸行無常、覇者たる者も、かならず滅びる運命にある。おそらく未来でも、それは変らぬであろう。
 もし、争いがなければ、光火箭もいらぬ。退魔船もいらぬ。(略)
 やがて、われらにも、あの力をつくりだす日が来よう。だが、あの力を、武器につかってはならぬ。山を毀ち都をつくり、海を埋めて田畑とするごとき、民の為になる目的に使わねばならぬ。


 近所の国が核開発をおしすすめ、領海で小競り合いが行われている昨今、国防という観点も大事ですが、基本はこういう反省をわたしたちが「歴史」の中からいかに学ぶかということが問われているような気がします。しかし、民のために使われようとしていた新技術が惨禍を引き起こすのも事実で、科学と人間の生活ということを、今一度、昔日のSFを読み直して考えることも今の我々には必要なことのように思います。さまざまなものが胸に去来する、今こそ読むべき作品であると思いました。
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