○
『九月は三十日あった』
骨董屋で、アンドロイド教師を購入したダンビーはさっそく家に戻って、彼女を起動させるのだが・・・・・・。
なんだか切ないお話。ラストは少し飛躍しすぎのような気もするが、人間どうしのふれあいってやっぱり大切だよね。
◎
『魔法の窓』
エイプリルという女に、なぜだかひかれた主人公は、彼女の家へ行き、「魔法の窓」を覗くのだが・・・・・・。
結末の種明かしも、なんてことないんだけど、じーんときてしまうのはなぜだろう?女性の描き方が、上手だなあ。
☆
『ジョナサンと宇宙クジラ』
新地球宇宙軍の砲手だったジョナサン・サンズは、突如現れた巨大な宇宙クジラにミサイルを放つように命令される。しかし、発射をためらった彼は、クジラに近づきすぎ、クジラの衛星軌道に乗ってしまい、搭乗していたカプセルも分解し、もはやこれまで、と思ったとき、彼はクジラの中に呑みこまれていた。
素晴らしい。宇宙空間に漂うクジラ・・・・・・。その光景だけで、まず、圧倒される。クジラ内部の人間たちと、クジラの関係は、人類と地球のそれを暗示していて、興味深い。温かな気持になれる作品。ところで、大原まり子氏の『銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ』は、この話に影響されたのかな?
○
『サンタ条項』
悪魔との契約で、ロスは自分だけのサンタクロースを出現させてほしいとたのむのだが、それが、騒動の発端だった・・・・・・。
ユーモアファンタジー。ちょっと、笑った。
○
『ピネロピへの贈りもの』
猫のミルク代も払えない老女は、海を見つめる少年を見つけ、彼を家の中に招き入れる。その少年は実は・・・・・・。
心あったまるお話ですが、根本的な解決になってないような気もする。
×
『雪つぶて』
野原に小さな円盤が到着し、軍隊はそこへ急行した。
よくわからなかった。
◎
『リトル・ドッグ・ゴーン』
泥酔から目ざめるとニコラス・ヘイズは辺境の惑星にいた。そこで、彼はテレポーテーション能力を持った不思議な犬のような生物に出会う。
「真実の愛を知る」形式の物語。辺境から、辺境を渡り歩く旅芸人の暮らしぶりがなんだかよかった。いい話です。
○
『空飛ぶフライパン』
タレントを目指して都会へやってきたマリアンは、今ではフライパン製造の工場で、毎日ルーティーンをこなしている。暗澹として帰る家で、彼女はフライパン、いや、小さな宇宙船を発見する。
ユーモアSFファンタジー。ラストはにやりとしてしまいました。
◎
『ジャングル・ドクター』
転位装置への数値の入れ間違いで、心理療法士のサリスは地球へとやってきてしまった。凍え死にしそうだった彼女は野蛮な原住民に助け出されるのだが、その原住民リンゼイは心に傷を負った哀れな男だった。
これもなんとなくじーんときてしまいます。しかし、すごい題名だ。
◎
『いかなる海の洞に』
叔父の莫大な遺産を相続した、文学好きの青年デイヴィットは、海でヘレンという女性と出会う。彼らは愛し合い、結婚をするのだが、彼女はどんどん大きくなり始めた・・・・・・。
巨大な女性の話って、なんだか好きなんですよねえ(なんか変態みたいな言い種ですが)。吾妻ひでおの巨大化する少女とか、永井豪の漫画に登場するアマゾネスとか・・・・・・。だから、この話も当然面白く読みました。なんだか、悲しいお話です。
総評:あまーい味がします。こう臆面もなく「愛」が書かれると、逆に照れないものです。特に『ジョナサンと宇宙クジラ』は種族を超えた友情が微笑みを誘います。この人のお話はもっと読みたいです。名作と呼ばれている『たんぽぽ娘』も早く読みたいなあ。解説の久美さんのお話では、河出の奇想コレクションで近々出るみたいですが。
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